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人口5千万人以上の国で、国際小児喘息・アレルギーが人口割合で最も低い国は?

GBD(世界疾病負担研究)2017年データでは、年齢調整DALY(障害調整生存年、有病率と相関する指標)が最も低かった上位5カ国は、ウズベキスタン、アルメニア、タジキスタン、中国、カザフスタンでした。この中で人口5,000万人を超えるのは中国のみです(他はいずれも人口3,000万人未満)。

 

 

ISAAC(国際小児喘息・アレルギー研究)**の学童対象調査では、

 

* 6〜7歳児ではイラン(2%)が最も低く、日本・スウェーデン(16%)が最も高い

 

* 13〜14歳ではアルバニア(1%)が最も低く、ナイジェリア(17%)が最も高い

 

とされています。イランは人口約8,900万人なので、この年齢層のデータでは候補になります。

 

 

また別の中国の研究レビューでは、「イラン、アルバニア、インド、シンガポール、スペインなどは低有病率国」として言及されています。

 

 

なぜ一つに絞れないか

 

* 調査年代・対象年齢(小児 vs 成人)・診断基準(自己申告 vs 医師診断 vs UK基準)が研究ごとに異なる 

 

 

* 発展途上国では大規模調査自体が少なく、データの質・カバレッジにばらつきがある

 

 

* 「有病率」と「DALY(疾患負荷)」は必ずしも同じ順位にならない

 

 

まとめると

 

現時点の複数データを総合すると、中国が人口5,000万人以上の国の中では継続的に低いグループに位置しており、最有力候補と言えます。ただしイランやインドも調査によっては同様に低い結果が出ており、「決定版の1カ国」を断定できるだけの一貫した国別統計は存在しないのが実情です。

 

 

低有病率国が共通してもつ特徴(他国と何が違うのか?)を調べて下さい。

 

 

経済発展度(SDI:社会人口統計指数)との強い相関

 

最も一貫して報告されているのが、社会人口統計指数(SDI:所得、教育、出生率などから算出される指標)が高い国ほど、アトピー性皮膚炎の有病率が高いという関係です。具体的には、SDIが最も高い国群ではアトピー性皮膚炎の有病率が人口10万人あたり3,540人であったのに対し、SDIが最も低い国群では1,359人と、約2.6倍の差がありました。GBD研究でも高所得地域で最もDALY負担が大きく、最も高い国はスウェーデンという結果が出ています。

 

つまり低有病率国は「経済的に発展途上」であることが最大の共通項です。

 

「衛生仮説(hygiene hypothesis)」による説明

 

衛生仮説は、生活環境の改善、抗生物質の使用、小児期のワクチン接種によって感染症が減少した結果、先進国でアレルギー疾患の有病率が高くなることを説明するものです。低有病率国は逆にこの要素が乏しい、つまり:

 

 

* 幼少期に微生物・寄生虫・細菌内毒素への曝露が多い

 

* 動物との接触を伴う屋外生活が一般的

 

* 抗生物質の使用機会が少ない

 

 

といった環境が、免疫系の「訓練」を促し、アレルギー疾患の発症を抑制していると考えられています。衛生、腸内細菌叢、細菌内毒素への曝露、動物と接触する屋外生活、大気汚染、気象、食事といった要因が重視されており、遺伝的要因(皮膚バリア機能の異常)や免疫学的要因もこれらと関連しているとされます。

 

 

都市化・大気汚染との関連

大都市圏に居住し高い教育を受けた層でアトピー性皮膚炎の有病率が高いことが複数の研究で報告されており、都市環境に関連する多くの要因がこの現象の背景にある可能性がある。増加した有病率は自動車由来の粒子状大気汚染や、灯油など現代的燃料の家庭内使用の増加と関連していた。つまり低有病率国は相対的に非都市化・非工業化の環境にあることが多いという傾向です。

 

 

移住による「証明」ケース

環境要因の重要性を裏付けるデータとして、東西ドイツ統一後、東ドイツでは短期間のうちにアトピー性皮膚炎の有病率が1991年の16%から1997年には23.4%まで上昇したという事例があります。また米国生まれでない成人は当初湿疹の有病率が有意に低かったが、10年後には現地生まれの人口よりも湿疹・喘息の有病率が有意に高くなったことも報告されています。これは同一の遺伝的背景を持つ集団でも、生活環境(西欧化された環境)に曝露されることで有病率が上昇することを示しており、「国」という単位そのものより「その国の生活様式・環境」が決定要因であることを裏付けています。

 

 

一つ注意点

ただし社会経済的地位(SEP)とアトピー性皮膚炎の関係を調べた88研究のうち、正の関連を認めたのは42%(37件)、負の関連は15%(13件)、有意な関連なしまたは結果が一貫しないものが43%(38件)という systematic review もあり、「低SDI国=低有病率」という関係は統計的に強い傾向ではあるものの、個別研究レベルでは必ずしも一貫していない点は留意が必要です。

 

 

まとめると、低有病率国に共通する特徴は「経済的発展度が低い」「都市化率が低い」「幼少期の微生物曝露が多い(衛生仮説)」「大気汚染や現代的燃料への曝露が少ない」という、要は”前近代的な生活環境”に集約されます。