お知らせ

1週間に25個以上は作らない。各国の職人と、地域独立型の製造を目指すアウトドアバッグ

モノを作ることは、環境負荷を生むことでもある──このジレンマに、葛藤する人は少な

くないだろう。

 

だからこそ環境負荷の低い商品の開発が進められているのだが、現代の経済構造では、

大量生産・大量消費型でないと高値になってしまう。

結果として、サステナブルと謳いつつも大量生産型に陥ったり、

少量でサステナブルな商品を売りたいブランドが経済的に事業を維持できずに淘汰された

りしていく。

 

どうすれば、環境負荷が低い商品を、大量生産ではない方法かつ、

ハイエンドになりすぎないように製造し、ビジネスとして確立することができるだろう

か。この問いに対し、イギリスのアウトドアバッグブランド・Wildishは、

あえて製造数に上限を設け、分散型の製造を目指すことで、答えを見出そうとしている。

 

小さいバッグを肩からかけて歩く2人

GOTS認証(オーガニック繊維の国際認証)のコットンを使用した、ドライワックスの撥水生地を使用したバッグ|Image via Wildish

 

小さいバッグを肩からかけて歩く2人


GOTS認証(オーガニック繊維の国際認証)のコットンを使用した、

ドライワックスの撥水生地を使用したバッグ|Image via Wildish

羊がいる牧場に立ち、オレンジのリュックを背負う女性
Image via Wildish

Wildishは1週間に作るバッグの数を「25個だけ」と公言している。

なぜなら、「それが私たちのキャパシティだから。

急激な成長を目指すつもりはない」とのこと。

1週間に25個、つまり1年間に1,300個という数字を公表することは、

事業全体における正直な環境負荷と、それに対する責任の自覚を明確に示すものとなるだ

ろう。

 

そのバッグを作る職人は、イギリス在住のAmyさんとRayさんの2人。

どちらも30年以上バッグを作っているベテランで、Amyさんは自身が持つ少人数のチーム

と共に制作に携わっている。

同社が目指すのは、「グローカル(global + local)」な分散型の製造方法。

世界各地のバッグ職人と契約して、それぞれの地域の素材でWildishのバッグを製造し、

その地域内で販売まで行うのだ。

これにより、国際輸送を大きく減らして環境負荷を減らすと同時に、

製造ラインが抱えるリスクを分散できる。

さらに、どこで暮らす買い手にとっても「地域独自」の商品に仕立てられるのだ。

 

2025年3月現在の拠点はイギリスのみで、染色やラベル製造は国内事業者と契約し、

中綿は西ヨークシャーの100%リサイクル・ウールを使用。

留め金具はオーストリアから陸路で、ジップはスイスから調達するなど欧州を軸とした取

引先がある。

 

現段階では、インドで栽培・製糸されたオーガニックコットンや、

最小ロット数の制限が障壁となり中国製の金具を使用するなど、

イギリスから遠く離れた地域からの素材や部品も含まれる。

しかし、今後は原材料や部品に関してより近隣の調達先を模索しているという。

 

販売後の取り組みも考慮されている。同社は「生涯保証」の一環として、

製造および素材に関連する欠陥があった場合には無料修理サービスを提供。

消耗による修理は有料で受け付けている。

また、使用しなくなったバッグを同社に返却した場合

もとの値段の10%がポイントでのキャッシュバックされ、回収されたバッグの素材は再利

用される。

こうした工夫を凝らしても残る、調達やモノづくり自体が抱える課題。

同社は、ウェブサイトで次のように述べる。

 

 

何か作れば、地球を傷つけます。これは素材がどれほどサステナブルでも、

運送距離がどれほどでも、関係ありません。私たちは、この被害を軽減するために最善を

尽くします。

具体的には、同社は素材や耐久性の改善と併せて、気候アクションプラットフォーム・

Ecologiでのカーボンオフセットを行っている。

同社のオフセット状況はサイトから常に確認可能だ。

今後、分散製造モデルを実現するにあたり、各地での環境負荷に対し適切なオフセットが

どう選ばれていくのか、注目したい。

共同創設者のOscarは、IDEAS FOR GOODの取材に対しこんなメッセージを伝えてくれ

た。

 

 

「生産量を制限するということは、最大の量ではなく、

最高の質の製品を作ることに集中できるということだと思います。

また、バッグが寿命を迎えるまで手入れを怠らないことも意味します。

私たちは、大規模なビジネスにならなくても、素晴らしいものを作り、意義あることを実

践できると示したいのです」

大量生産・大量消費型の構造の根は想像以上に深く複雑だ。

それでも、経済が環境負荷を無視できなくなった今、製造数の上限や分散型の製造方法

は、モノづくりの構造を揺るがすオルタナティブとなるかもしれない。