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室内ではページが真っ白?

「外でしか読めない絵本」が問う、自然とデジタルのバランス。

「昔むかし、あるところに……」

昔話でおなじみのフレーズだ。ただし、これを読み上げるとき、

手元にあるのが絵本だとは限らない時代になった。

今、絵本や読み聞かせはスマホやタブレットで見る動画へと急速に置き換わっているようだ。

日本を対象とした調査によると、

2〜3歳の子どものうち約半数が自分または親のデジタル機器を使用しており、

3歳以上になるとその割合はさらに増えていくという。

その使用目的は、主に動画やゲームだという。こうした流れに合わせて、

デジタル絵本や読み聞かせアプリも登場している。

一方で、子どもとデジタル機器の関わり方について、

各国で規制が検討されている。たとえば2024年1月には、

スペイン・カタルーニャ州で学校へのスマートフォンの持ち込みが原則禁止と規定された。

さらに同年9月、スウェーデンでは、

子どもの年齢に応じたデジタル機器の使用制限について勧告が出された。

これは運動や睡眠の不足、うつ症状、不適切なコンテンツに触れることへの懸念などから発令されたという。

あまりにもデジタルの世界が身近にある今、

子どもたちにどのような「楽しさ」を伝えることが大切だろうか。

ある絵本は、その問いに答えてくれるかもしれない。

それが、『Lá Fora É Mais Legal(Outside is Cooler:

外の方がかっこいい)』だ。この絵本は、室内で開いてもページが真っ白で、

読むことができない。ところが、外に持ち出して太陽のもとで開くと、

絵や文章が見えるようになるというのだ。絵本の内容は、

子どもたちが自転車に乗り、外での冒険が始まるという物語だ。




この絵本は、キャンディブランド・Fruittellaのブラジル支社が、

クリエイティブエージェンシー・VML Brasilと共に手がけたもの。

同社は、外で遊ぶ時間をより楽しいものにすることを目的として、この絵本を作成したそうだ。

省スペースで、一冊あたりが安価にもなるデジタル書籍。

子どもたちにとっても、デジタル絵本や動画など、

スクリーン上で広がる魔法のような仕掛けは魅力的だろう。

それでもやはり、本のページをめくる穏やかな時間や、

思いのままに外を駆け巡る経験の有無は、子どもたちの心と身体に少なからず影響を及ぼす。

そして現実の自然界では、デジタルの世界では得られない経験もできるはずだ。

その可能性に光を当て、子どもたちが一歩踏み出す後押しをするのは、大人の役割ではないだろうか。

効率の良いデジタルの世界とバランスをとりながら、

子どもたちの心の豊かさが大切にされる環境を築くには、何が必要かを見極める姿勢を持ち続けたい。