現在、先進国(OECD加盟国38カ国)における1人当たりの衣類支出額ランキングにおいて、日本は「中位からやや下位(おおむね20位台前半)」に位置しています。
ただし、この順位は国際比較の際に用いられる為替レート(近年の急激な円安)の影響を強く受けるため、年によって変動しますが、トップクラスの国々(アメリカ、イギリス、北欧など)と比較すると明らかに少ない水準にとどまっています。
日本の最新の総務省「家計調査」に基づくデータと、日本特有の構造的な背景は以下の通りです。
日本の衣類支出の現状と金額の目安
日本の1世帯当たり(2人以上の世帯)の「被服及び履物」への年間支出額は、おおよそ10万〜11万円程度で推移しています。これを1人当たりに換算すると、年間約4.5万〜5万円程度となります。
現在の為替レート(円安水準)でユーロに換算すると300〜350ユーロ程度となり、ドルやユーロベースの国際比較においては、先ほど挙げた東欧のワースト国(ハンガリーやブルガリア)に近い水準まで見かけ上の金額が目減りしているのが実態です。
日本の洋服代が高くない(順位が低い)3つの理由
日本が経済規模(GDP)に対して衣料品への支出額が少ないのには、日本のアパレル市場特有の強力な理由があります。
1.「高品質・低価格」なファストファッションの圧倒的普及
ユニクロやGU、しまむらなどに代表されるSPA(製造小売業)が極めて高度に発達しているため、「安くて品質の良い服」が世界で最も手に入りやすい環境にあります。そのため、欧米の同等の所得層に比べて、1着あたりに支払う単価(平均購入価格)が劇的に抑えられています。
2.長期的なデフレマインドと「被服費」の優先度低下
日本では1990年代のバブル崩壊以降、家計の消費支出に占める「被服費」の割合が一貫して減少し続けています。かつてはお金をかけていた洋服代が、現在では「通信費(スマホ代)」や「サービス・体験」へと完全にシフトしており、衣類は「必要最低限の予算で賢く揃えるもの」という価値観が定着しています。
3.急激な円安による国際的な購買力の低下
円安により輸入品の価格は上がっているものの、賃金の上昇がそれに追いついていないため、家計はさらなる節約を強いられています。食費や光熱費など「削れないコスト(生活必需品)」の物価高騰が直撃しているため、ワースト国と同様に「洋服代の買い控え」が進行しています。
結論として、日本の順位が中位〜下位に留まっているのは、「国民が貧しくなって服を買えなくなった側面(インフレや円安による可処分所得の圧迫)」と、「企業努力によって安く服が買えるという恵まれた側面(高品質・低価格のインフラ化)」の両方が入り混じった結果と言えます。
