科学的な証拠に基づくと、大気汚染はアトピー性皮膚炎(AD)の発症と重症化の両方に深く関与しています。
病態生理学的なメカニズム
大気汚染物質が皮膚に及ぼす影響には、主に以下の4つのプロセスが確認されています。
皮膚バリア機能の破壊:
粒子状物質(PM2.5など)や二酸化窒素(NO2)への曝露は、経皮水分蒸散量(TEWL)を増加させ、皮膚のバリア機能を直接損なわせます。
酸化ストレスの誘導:
汚染物質は活性酸素種(ROS)を生成し、脂質過酸化やDNA損傷を引き起こします。
免疫系の乱れ:
芳香族炭化水素受容体(AhR)経路の活性化を通じて、炎症性サイトカインの放出やTh2型免疫反応の増強を招き、アレルギー反応を悪化させます。
マイクロバイオームの変化:
皮膚表面の細菌叢(マイクロバイオーム)のバランスを崩し、黄色ブドウ球菌の定着を促進することで炎症を誘発します。
National Institutes of Health (NIH)
疫学的な証拠
世界規模での研究により、汚染物質とAD症状の関連が示されています。
主要な汚染物質: PM2.5、PM10、NO2、SO2(二酸化硫黄)、および**揮発性有機化合物(VOCs)**への曝露が、ADによる受診数の増加と相関しています。
ライフステージ別の影響:
胎児期・乳幼児期:
妊娠中の母親が汚染された空気に曝露することで、子供のAD発症リスクが高まることが示唆されています。
成人:
高齢者を含む成人においても、交通関連の大気汚染や野火の煙による短期的な曝 露が症状の再燃を招くことが報告されています。
野火の影響:
近年の研究では、野火の煙(PM2.5の急増)が発生した際、皮膚科へのADや痒みに関する受診率が有意に上昇することが確認されました。
Wiley Online Library
主な大気汚染源
証拠として挙げられる汚染源は多岐にわたります。
屋外:
自動車の排気ガス、工業施設、建設現場の粉塵、野火。
屋内:
タバコの煙、カビ、清掃用品や建築材料から放出されるVOCs、調理時の排煙。
