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アパレル小売を困惑させるZ世代のファッショントレンド

 

怠惰で甘やかされ、デバイスを手放せない──。Z世代をそうした独特の存在のように語るのはもうやめよう。


第一に、Z世代はもはや子どもではない。第二に、世界人口の推定約25%を占めるに至っている。第三に、目の肥えた消費者となっており、購買力がある。前の代から受け継がれてきた財産の相続が始まれば、購買力はさらに大きなものになる。

 

市場調査会社ニールセンIQは、世界のZ世代の購買力は2030年までに12兆ドル(約1840兆円)に達すると予測している。

 

Z世代はいま重要な消費者層とみなされており、プライスウォーターハウスクーパース(PwC)の最近の報告書によると、Z世代は「多くの小売業者にとって、解き明かすことができない謎の存在」だという。

 


そうした傾向はファッション分野で特にあてはまる。

 

Z世代は現在13〜28歳で、米国の総人口3億4300万人のうち、約6000万人がZ世代だ。つまり6000万人の若者が、今まさにブランドに対する長期的な親しみを形成し、生涯にわたる愛顧の姿勢や好みを育んでいる。

 

多くの消費者の出現はファッション業界にとって新たな挑戦だ。ミレニアル世代が好んでいた体のラインがはっきり出る着こなしやミニマルルック、アスレジャー(スポーツウェアの機能性を取り入れた普段着)、あつらえのジャケットといった多くの人が憧れるようなファッションはZ世代にとって魅力的ではないことに各ブランドは気づいている。ミレニアル世代が所属するか溶け込むことを望んだのに対し、Z世代は目立つことを望んでいる。

 

自らの魅力の発信とパーソナライゼーションがすべてだ。

 

つまり、ファストファッションの生産が追いつく前に、ヴィンテージルックのような短命なトレンドがSNS上で生まれては消えていく。ジェンダーの表現は変わりやすい。男の子は髪を染めている。女の子は大きめのブレザーにダボっとしたジーンズを着ている。大胆な色使いや存在感のあるジュエリー、大きくてがっしりしたアイウェアが流行っている。


Z世代はなかなかの倹約家でもある。PwCの調査によると、Z世代は今年のホリデーシーズンに消費を昨年より25%ほど抑える予定で、お買い得を狙っている。Z世代は古着屋で買い物をすることが多く、小売店と直接競合する強力な新たな存在として古着屋は急増している。Z世代が買い物をするとき、彼らはお金以上の価値を得たと感じたいのだ。

 

これだけでは業界へのプレッシャーが十分でないかのように、倫理や持続可能性に関するあらゆる脅威が潜んでいる。例えば、こうした要素に注意を向けている若い消費者がとある小売ブランドが年季契約労働者から搾取している工場を抱えていると耳にした場合、そうしたブランドは不意打ちを喰らう。

 

Z世代は評価が低下したブランドから単に離れるだけでなく、SNSを使って世界中にそのことを知らしめるだろう。

 

ファッション小売にとって、適切な商品を適切な価格で提供するだけではもう十分ではない。Z世代を相手に顧客ロイヤリティを獲得しなければならず、しかもそれはもろい。米シラキュース大学の研究機関Dynamic Sustainability Lab(ダイナミック・サステナビリティ・ラボ)のレポートによると、Z世代の消費者の81%が「ブランドの行動や全体的な評判に基づいて商品購入の判断を変えたことがある」という。

 

ひとつ確かなことは、Z世代を理解するのは難しいが、彼らは本物の消費者であり、チャンスを与えれば関心を示してくれるということだ。業界がファッションについて口を出せる世代ではなく、関わり、理解し、サービスを提供する世代になることは明らかだ。