男性の乳房に変化が起きることは珍しくない。脂肪で膨らんだり、乳腺組織が肥大したりするケースがあり、その両方が同時にみられることも多いが、まれに乳がんも発生する/Vladimir Vladimirov/E+/Getty Images
(CNN) 男性の乳房に変化が起きることは珍しくない。脂肪で膨らんだり、乳腺組織が肥大したりするケースがあり、その両方が同時にみられることも多いが、まれに乳がんも発生する。
男性の乳腺組織が肥大する「女性化乳房」は意外に多い。痛みや圧痛のない無症状の女性化乳房は、健康な男性の30~50%にみられるとの研究報告もある。つまり男性の半分近くが、自分では気づかなくてもある程度の乳腺肥大を経験していると考えられる。
乳房の構造と機能
男性も女性も同じように、乳房は大胸筋の外側に位置し、主に脂肪組織と乳腺組織で構成される。
乳房の大きさと形を決める脂肪組織は柔らかく、体重の変化に応じて増えたり減ったりする。乳腺組織は乳管や支持組織から成り、ホルモンに反応する。女性では思春期と妊娠中に女性ホルモン「エストロゲン」の刺激で組織が肥大する。男性では、男性ホルモン「テストステロン」の作用で組織が小さく、未発達の状態に保たれるが、乳管や乳腺、乳首の構造はそのまま残っている。
男性に女性化乳房や、まれには乳がんも起き得るのはこのためだ。男性の乳房が膨らんだ場合、脂肪組織と乳腺組織のどちらが増大しているかによって、その意味は異なる。
胎児は「女性の青写真」からスタートする。男の子のY染色体から男性の身体的特徴を発達させる合図が出るより前に、乳首が形成される。テストステロンが活性化するころにはすでに乳首があるというわけだが、男性の乳首はほぼ停止状態が続く。
しかし特定の条件下で、男性が乳を出すこともあり得る。男性の乳房にも女性と同じく、乳管や乳汁をつくる細胞などの基本構造がある。ただし普段はテストステロンで抑えられ、女性のように乳汁分泌ホルモン「プロラクチン」が急増することもない。
ところが、プロラクチンの分泌を促す一部の薬剤や脳下垂体の病気、慢性肝臓病、前立腺がんのホルモン治療などで、まれに乳汁をつくる細胞のスイッチが入ることがある。通常は心配ないが、分泌が長引いたり血が混じったりしている場合は医師に診てもらうのがいい。
脂肪が関係する「偽性女性化乳房」
男性の胸が膨らんでくる原因で、最も多いのが脂肪だ。男性の体重が増える際、脂肪は腹や腰回りと同様、胸に集中することがある。この状態は「偽性女性化乳房」と呼ばれ、男性の5人に2人が肥満に分類される米国では非常によくみられる。
このタイプの膨らみは柔らかく、全体に広がっている。硬かったり、押すと痛かったりすることはない。医学的に危険ではなく、通常は減量や運動、健康的な生活習慣で改善する。
真性の女性化乳房
乳首と乳輪の下の乳腺組織が肥大する女性化乳房は、脂肪が原因ではない。組織は硬めで、押すと痛いこともあり、乳首の真下に位置する。
この肥大は、テストステロンとエストロゲンのバランスが変化した時に起きる。思春期の男子の3人に2人が、ある程度の女性化乳房を経験する。これは正常な過程で、たいていの場合はホルモンが落ち着けば自然に治るため、治療が必要なケースはほとんどない。
思春期のほかにも、男性が年をとると、再びホルモンの変化が起きることがある。テストステロンが自然に減少するにつれ、女性化乳房がよくみられるようになり、そこへ体重増加やホルモン分泌量を変化させる薬剤が加わることも多い。
組織肥大の原因はほかにも
男性の乳腺組織が肥大する原因は、ホルモン以外にもある。脱毛症や前立腺肥大の治療薬「フィナステリド」や、前立腺がんの治療に使われるビカルタミドは、テストステロンの作用に影響し、乳腺組織を肥大させることがある。薬をやめれば戻るケースもあるが、長期間そのままになっていた場合は完全に元通りにならないかもしれない。
アルコールや大麻も、特に大量あるいは頻繁に摂取した場合、ホルモンの経路に影響を及ぼす。ボディービルによく使われる筋肉増強剤「アナボリックステロイド」でも乳房の変化、肥大が起きる。
甲状腺や肝臓、腎臓の病気でホルモンのバランスが崩れ、組織肥大が促されることもある。この場合、乳房の変化がより重大な警告を発している可能性も考えられる。
医師に相談すべきケースは
乳がんの約1%は男性に起こる。新たなしこりや変化を医師に診てもらったほうがいいのは、このためだ。
硬くて触っても動かないしこりや、片側だけの膨らみ、乳首からの分泌物、急激な肥大はすべて、がんの可能性を排除するために診てもらう必要がある。女性化乳房が長引いたり苦痛を伴ったりする場合も、診察を受けるべきだ。
治療の選択肢
治療は原因によって異なる。偽性女性化乳房は脂肪が減れば元に戻ることが多い。真性の場合も、体脂肪を落とせば悪化の原因となり得るエストロゲンが減少する。
乳腺組織が縮小しない場合は、手術で乳腺を切除し、男性的な形に整えるという選択肢も考えられる。
テストステロン不足が確認された男性には、時としてホルモン補充療法が効く。ただしテストステロンが正常値の場合は、過剰なテストステロンがエストロゲンに変換され、症状が悪化する恐れがある。自己流でなく医師の管理下で受けることが必要だ。

