低コストの繊維産業から高付加価値産業への移行
バングラデシュ自身が掲げる目標
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「ビジョン2041」:2041年までに「先進国」になることを掲げており、その中で高所得国化・製造業の拡大・人材育成・輸出の多様化・輸出額の増加を目指している。
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産業政策(2022年):競争力のある輸出志向型産業を育成し、ハイテク・高付加価値産業の比率を高め、スタートアップや中小企業を支援する方針。
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具体目標:中高度技術産業の付加価値比率を2025年までに15%、2030年までに20%へ引き上げる(現在は約5~6%)。
→ 政府自身は、2025〜2030年を「転換を加速させる時期」と見ている。
移行に必要な条件
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インフラ:安定した電力、交通・物流(港湾・道路・鉄道)、産業ゾーン、スマート/グリーンインフラ。
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人材・教育:高度技術人材、エンジニアリング、研究開発能力、マネジメント力、デジタル・自動化など第4次産業革命技術の導入。
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制度・政策:安定した規制、ビジネス環境の改善、投資促進、産業政策の一貫性。
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資金・投資:国内外からの投資呼び込み、資本蓄積、適切なインセンティブ設計。
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イノベーション・バリューチェーン:国内供給網の整備、川下・川上の連携、基礎的な繊維製造から技術繊維・電子機器・製薬などへ移行。
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課題:スキル不足、インフラ遅れ、官僚主義、規制の不安定さ、資金調達の制約、研究開発文化の弱さなど。
他国の経験
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アジア開発銀行などの研究によると、「中所得国」から「高所得国」への移行には通常 30〜40年 かかる。
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ただし日本・韓国などは強力な政策と人材育成により 18〜20年 で達成した例もある。
バングラデシュの見通し(推定)
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2030年頃:中高度技術産業が一定のシェアを占め始め、電子機器・製薬・軽機械などの輸出が拡大。インフラ改善も進む。
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2035年頃:輸出の多様化が本格化し、「低コスト縫製国」からの脱却が目に見えて進む。
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2040〜2045年:高度な研究開発力や複雑なサプライチェーンを持ち、先進的な工業国に近い水準へ。
→ 政府の「2041年先進国化」目標と重なる。
結論
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大きな転換(=低コスト縫製依存からの脱却)は 今後5〜15年(2030〜2035年頃) で可能。
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より完全な高付加価値型経済への移行には 15〜25年(2040年頃まで) がかかる見込み。
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バングラデシュ自身の計画も 2041年頃を目標 にしている。