2035年にかけて、世界のアパレル産業は大きく変化すると見られています。以下、主なトレンドとその影響をまとめます。
主な変化の方向性
サステナビリティとサーキュラーエコノミーの強化
廃棄物削減・リサイクル技術の進歩
繊維のリサイクル(機械的、化学的)、高度な廃棄物分別・ソーティング技術などが確立し、使い捨てではないファッションが主流になる。
サステナブルな素材の拡大
キノコ(マイセリウム)由来の革代替素材、植物由来(パイナップル葉、リンゴなど)/木材由来繊維、オーガニック・ヘンプなどの素材がより一般的に。
動物由来素材・高炭素素材への見直し
羊毛・カシミア・革といった素材の環境インパクト(メタン・牛の飼育など)がクローズアップされ、代替素材や人工素材への移行が進む。
テクノロジーの導入・拡張
デジタルファッション、仮想・拡張現実(VR/AR/メタバース)
デジタル衣服やアバター用のアイテムなどが若年層を中心に流行し、ファッションの「着る・所有する」ことの概念が変容。
AI・データドリブンな設計・生産・小売
トレンド予測、需要予測、在庫管理、フィッティング(サイズやパターン)の最適化などにAI活用。無駄のある生産・在庫を抑制。
オンデマンド製造、カスタマイズ
顧客ごとにサイズ・デザインを選べる仕組みが普及。3Dスキャニング、仮想試着の活用など。
消費者の価値観・購買様式の変化
より倫理的・環境意識の高い消費
資源や動物の扱い、労働環境への透明性を重視する動きが強まる。ブランド・生産地のストーリーやエシカル性が差別化ポイントになる。
所有からアクセスへ:レンタル、サブスクリプション、共有型ファッション
高価でないが短期間しか使わないアイテムをレンタルする、またデジタルアイテムをサブスクで使うなどのモデルが拡大。
製造・サプライチェーンの変化
自動化/スマートファクトリー化
ロボット、AI制御システム、3Dプリンティングなどを用いて生産効率を上げ、少量多品種にも対応できる体制。
ローカル化&近接生産
輸送によるコストや環境負荷を低減するため、生産拠点の地域分散や地産地消型の供給網が見直される。これは、政策・規制/消費者の支持によって促される。
見えてくる姿:2035年のアパレル産業のあり方(予想像)
衣服は「長く使うもの」「修理・リメイク可能なもの」が標準になっている。ファストファッション中心の大量・使い捨て型モデルは縮小。
デジタルでのファッション表現が衣服と同じくらい重要に。SNSやメタバースでの「見える」ファッションアイテムが一つのステータスやアイデンティティの表現手段。
ブランドは持続可能性を核心戦略に持つものが主流。原材料や労働力、製造過程全体の透明性が消費者にとって重要。
規制や政策の役割が大きくなる。環境規制、炭素排出量・メタン排出の管理、動物保護に関する法律などがブランド経営に影響。
消費者体験が個別化・没入型に。仮想試着、フィジタル(phygital:実物+デジタル融合)なショッピング体験、AIスタイリングなど。