1. 農業構造と供給側の要因
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農地規模が小さい
日本は農地の平均規模が1〜2ha程度と非常に小規模。大規模有機農業が展開しにくく、欧米のような「有機大規模経営によるコスト削減」が難しい。
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高齢化と担い手不足
農業従事者の平均年齢は67歳前後であり、新規就農者も少ない。有機農業は手間と労力がかかるため、高齢農家が移行するインセンティブは乏しい。
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移行期の負担
有機認証(JAS)は転換に最低3年が必要で、その間は収量減少や農薬不使用によるリスクがあるが、価格プレミアムを得にくい。
2. 認証制度と流通の課題
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Organic JAS 認証のハードル
書類や審査費用が負担になり、農家にとって参入障壁が高い。小規模農家ほど「認証コストに見合わない」と感じやすい。
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流通網の限定性
大手スーパーでの有機売場はまだ小規模。流通量が少ないため価格が安定せず、結果として高価格が続く。
3. 消費者意識と需要側の要因
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安全=オーガニック という認識が弱い
日本は世界でも農薬基準・残留規制が厳しく、消費者は「国産=安全」と考える傾向が強い。そのため「有機だから特に安全」と感じにくい。
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価格感度が高い
有機食品は通常の2〜3倍の価格になることも多いが、消費者は価格プレミアムを払う動機が弱い。
→ 欧米では「環境保全」「動物福祉」意識が強いが、日本では「価格」と「鮮度」が優先されがち。
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“健康志向”の方向性
日本では「減塩」「低カロリー」「機能性表示食品」などが注目されやすく、「オーガニック=健康」という直結した需要がまだ弱い。
4. 政策・文化的背景
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政策支援が遅れた
EUでは補助金や環境政策と連動して有機農地を増やしてきたが、日本は本格的な有機推進戦略(MIDORI戦略)が出たのは2021年。普及はこれから。
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文化的な“伝統農法信仰”
「昔ながらの農法」や「地産地消」が安全・安心とされており、必ずしも「認証オーガニック」である必要を感じない消費者が多い。
5. 結果として
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供給不足 → 高価格 → 消費低迷 → 生産者も拡大しない
という 「鶏と卵」的な悪循環 が続いています。
一方で、都市部の若い世代や子育て層を中心に少しずつ需要が増え、最近はオンライン宅配や直販ECなどで広がりを見せています。
✅ まとめ
日本でオーガニック食品が普及しない最大の理由は、
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小規模・高齢化農業による供給制約
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高コストと認証制度の負担
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消費者の「国産=安全」意識と価格優先志向
の三つが重なっているためです。