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雨粒の重力をエネルギーに。都市のスキマ空間でも活用できる、次世代発電技術。

 

再生可能エネルギーの普及が進む中、気候変動やエネルギー問題への対応として、より柔軟な供給手段が求められている。特に都市部では、天候や設置スペースに左右されにくい新たな選択肢が必要だ。こうした中、「雨粒」が落ちるときのエネルギーを直接電力に変える新技術が、シンガポール国立大学の研究チームによって開発された。

 

 

彼らは、雨粒が落下する際に形成される「プラグフロー」と呼ばれる水と空気が交互に流れる流体パターンに着目した。この現象を利用することで、雨粒の運動エネルギーから電荷分離を起こし、電力を生成することに成功したのだ。

 

 

 

実験では、10%を超えるエネルギー変換効率と1平方メートルあたり約100ワットの電力密度を達成。これは従来のTENG(摩擦帯電ナノジェネレーター)技術の1〜2%に比べて5倍以上高く、雨天時でも発電が可能という利点も持つ(※1)。ちなみに、太陽光パネルの平均的な出力は1平方メートルあたり210ワット程度とされており(※2)、効率や出力では及ばないものの、狭い場所や曇天時でも安定稼働するという新たな選択肢として注目される。

 

 

また、出力は短時間ではなく継続的に得られることも確認された。チューブの本数を増やすことで出力を比例的に拡大でき、12個のLEDライトを20秒間連続で点灯させることもできる(※3)。

 

 

これまでの雨粒発電では、物体同士の摩擦によって生じる静電気を利用するTENG技術が主流だったが、新技術は水の動きそのものから直接電荷を生み出す。ポンプや外部エネルギー源も不要で、シンプルな構造ながら持続的な発電を可能にした。

 

 

 

また、大型水力発電が大量の水や広大な敷地を必要とするのに対し、プラグフロー発電はコンパクトで軽量なのが特徴だ。これにより、ビルの屋上や住宅の雨樋、道路脇の側溝といった小さな空間にも設置でき、メンテナンス負担も大幅に軽減される。

 

 

 

今回の技術は、まさにエネルギーについての新しい考え方を提示したと言える。例えば、オフィスビルの雨水排水システムに組み込めば、災害時の非常用電源の確保や省エネ効果につながる。レインガーデンや都市型農園と連携した新たな都市インフラの可能性もあるかもしれない。雨がもたらすエネルギーが、都市の新しい力になる日も、そう遠くはないだろう。