夕方、コンビニに立ち寄り「晩ご飯の足しに、一品買おうか」と思い、弁当やおかずのコーナーを眺めていると、ふと50円引きのシールが目に入り思わず色々と買ってしまった──そんな経験はないだろうか。
こうして割引シールのついた商品を購入することが、フードロス削減に繋がっていることを知っている人は多いだろう。メディアがその現状を報じ、コンビニ各社も廃棄量の削減に向けた呼びかけを行っている。それでも未だ日本国内のフードロスは多く、年間523万トン、一人当たり年間42キロの食品が廃棄されている。
つまり、ただフードロスの現状を訴えかけるだけでは足りない。より多くの人に消費期限の迫った商品を積極的に購入したいと思ってもらう仕組みがなくては、コンビニ業界のフードロスと処理費用の大幅削減には至らないわけだ。
ここに注目したコンビニ大手・ファミリーマートが、「思わず手に取りたくなる」値引きシールの全国店舗での展開を2025年3月11日に開始した。そのシールに描かれているのは、涙目のおにぎりのキャラクター。従来は「20円引き」などの値引き額が目立つデザインだったが、キャラクターと文字が横に並び「たすけてください」というメッセージが追加された。
従来のデザイン(左)と、実証実験で使用したデザイン(中央)、全国で導入予定のデザイン(右)|Image via プレスリリース
なぜ、涙目のおにぎりのキャラクターが採用されたのか。2024年10月末から、同社が東京都と神奈川県の一部店舗を対象に実証実験を実施したところ、従来の値引きシールよりも涙目シールの方が、購入率が5ポイントほど上昇。ヒアリングでは「食品ロス削減に関心があるので」という理由だけでなく「涙目で思わず助けたくなるイラストだったので」という購入理由も聞かれたそうだ。
今回の導入では、10円〜150円の間で7つの値引き価格が設定され、対象商品は弁当や惣菜などの調理済み食品。いくらの値引きにするかは各店舗の判断に委ねられる。東海地方(愛知県・岐阜県・三重県・静岡県の一部)から開始し、これから全国の店舗に拡大していく予定だ。
実証実験でみられた効果に基づくと、全国展開が実現すれば年間およそ3,000トンの食品ロス削減が見込まれる。同社のフードロスが年間5万トン超、1日あたり140トンであることから、およそ6%の削減になると推測される(※2)。全体を俯瞰するとまだ微量だが、対象商品の拡大などさらに削減するための次の手がかりは見えているだろう。
さらに削減割合を高めていくには、販売経路を強化するだけでなく、そもそも過剰に生産・仕入れをしないことも必要だ。ファミリーマートは今回の涙目シール導入と同時に、製造工程の改善により米飯全商品(チルド食品以外)の約70品目の消費期限を2時間延長が可能になったことも発表しており、生産サイドにも変化の兆しがみられる。
このような売れ残った商品の割引販売の強化は、同社に限った動きではなく、セブン-イレブン・ジャパンは「エコだ値」と称して展開し、ローソンはAIの活用も含め実証実験を進めている。今後コンビニ業界全体でフードロス削減の取り組みが加速することに期待したい。
今回ファミリーマートが取り入れた涙目シールの効果は、行動心理学的なアプローチの成果でもあるという。これは目的が違えば悪用のリスクがあることも肝に命じる必要はあるが、行動が強制されるのではなく、何となく感情が動いた結果として課題解決に繋がる影響力は大きい。こうして無理なく背中を押して市民と共に社会課題を解決する仕組みを生むことは、企業だからこそできるアクションのはずだ。