過去1200年で最悪とされる米カリフォルニア州の干ばつを生き延びたスカーレット・モンキーフラワー/Seema Sheth
過去1200年で最悪とされる米カリフォルニア州の干ばつの間、一部の野生の花の個体群が、不利な状況をものともせず生き延びた。研究者らは現在、これらの花が生き残ることができたのは「急速な遺伝的進化」の一種によるものだと考えている。このような現象が野生環境で確認されたのはこれが初めてだという。
この干ばつは2012~15年に発生し、1億本以上の樹木を枯死させた。この時期は、2000年に始まり現在も続いているメガドラウト(大規模干ばつ)の中でも特に厳しい期間であり、気候変動によって状況はさらに悪化している。この干ばつにより、通常は乾燥に強い植物でさえ枯れたが、湿った場所や小川のほとり、湧き水の周辺に生育する鮮やかな赤色の野生の花、スカーレット・モンキーフラワー(学名ミムラス・カルディナリス)は、驚くべき回復力を示した。
研究チームは8年間にわたり、この花の55の個体群を調査した。具体的には、野生での個体数の変化を追跡するとともに、この花のゲノムを解析し、遺伝的変化を明らかにした。
コーネル大学統合植物科学部の助教で、この発見に関する研究論文の筆頭著者であるダニエル・アンステット氏は、「この極度の干ばつにより、カリフォルニア全域に分布するこれらの個体群が減少していることを示すことができた。そしてゲノム全体にわたって急速な進化が起きている証拠を発見した」と述べ、さらに「この進化の度合いを示す指標を、これらの個体群が回復し、絶滅を免れる能力と関連づけることもできた」と付け加えた。この研究論文は12日、米科学誌「サイエンス」に掲載された。
種全体が絶滅の危機にあったわけではないが、個々の個体群は絶滅の危険に直面していた可能性が高く、個体数は最も多かった時期と比べて最大で9割も減少していた。アンステット氏によると、これらの個体群が回復するまでにはおよそ2~3年を要したという。
この急速な回復は、生物学者が「進化的レスキュー」と呼ぶ現象だ。これは、種が(進化によって)干ばつのような外的要因による絶滅の危機から回復する過程を指すとアンステット氏は説明する。
進化的レスキューは、これまで実験室の環境では実証されてきたが、野生では断片的な観察にとどまっていた。しかも、これらの研究は、進化的レスキューが実際に起きていることを示す十分な証拠にはなっていなかった。
今回の研究は、進化が実際に起こり、それが個体群の回復につながったことを示す厳密な証拠を提示しているとアンステット氏は主張する。
スカーレット・モンキーフラワーが生息するカリフォルニア州の小川/Daniel Anstett
干ばつの優れた指標
スカーレット・モンキーフラワーは多年生の草本植物であり、毎年同じ根から再び成長する。ハチドリによって受粉され、高さ・幅ともに最大約90センチまで成長する。
アンステット氏によると、この植物はカリフォルニア、バハ・カリフォルニア、オレゴン州南部の小川など、季節的に水が流れる場所に生育しており、生活環を完結させ、種子をつけるまで成長するには流水が不可欠であるため、干ばつの優れた指標になるという。
干ばつが起きると水の流れが止まる。そこで、この植物が取れる選択肢は二つに絞られる。一つは干ばつが本格化する前に急速に成長して花と種子を作る方法。もう一つは成長速度を大幅に落とし、翌年まで生き延びる方法だ。スカーレット・モンキーフラワーが選んだのは後者だとアンステット氏は説明する。
この過程を理解するために、研究者たちは19カ所で野生の草花の個体群の追跡調査を行った。研究者らは毎年現地を訪れ、植物が生きているか枯れているかを確認した。その後、植物から種子を採取して研究所で育て、成長した植物の葉をすりつぶしてDNAを抽出し、そのDNAを用いて、植物のゲノム、すなわち遺伝情報全体の解析を行った。
アンステット氏は「この急速な進化が7年という短期間のうちに起きていることを確認できた」と述べた上で、この植物が干ばつ耐性を得るために利用した遺伝子変異は新たに生じたものではなく、かなり以前に生じたものだろうと付け加えた。こうした干ばつ耐性の特性を持つ植物が生き残り、その変異は種子を通じて次世代へと受け継がれた。
この研究の次の段階は、この植物がメガドラウトを生き延びることを可能にした遺伝子変異が、干ばつが終わった場合にも引き続き有利に働くのか、それとも生育の妨げとなるのかを調べることだ。アンステット氏は、この研究は最終的に30~40年に及ぶ可能性があると指摘する。
進化的レスキューの証拠が増えても、干ばつや気候変動への懸念が和らぐわけではないが、極めて厳しい環境下でも耐え抜く力を持つ動植物がほかにも存在する可能性を示している。その実現の鍵を握るのが遺伝的多様性であり、植物の個体群をできるだけ広範囲に維持するための保全の取り組みは、依然として極めて重要だ。
アンステット氏も「この適応を実現する上で、遺伝的多様性が極めて重要な要素となり得る」とし、さらに次のように続けた。
「これは、遺伝的多様性を高め、生息地間のつながりを強化すべきという保全生物学者への示唆だ。そうした取り組みにより、生物は最終的にさまざまな環境ストレスに対し、より高い耐性を持てるようになる」


