1. 政策支援の遅れと方向性
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欧州(特にEU):
補助金や環境政策と連動して有機農業を推進。農家が有機転換する際、収入減少を補填する直接支払い制度あり。結果、農地全体の10%以上が有機に。
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日本:
有機農業推進法(2006年)はあったものの、財政的支援はほとんどなく、具体的施策は弱かった。
→ 2021年の「みどりの食料システム戦略」でようやく「2050年までに有機農地25%」という大目標が出たが、補助金・制度面の裏付けは乏しい。
2. 既存農薬・肥料産業との関係
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日本の農業は JA(農協)を中心とした農薬・化学肥料の販売網が非常に強固。
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農協経済事業の大きな収益源は「農薬・肥料の販売」。有機が広がるとこれが縮小するため、農協としては積極的にオーガニックを推すインセンティブが弱い。
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政治的にも農協は自民党と長く結びついてきたため、「慣行農業を前提にした農政」が維持されやすい。
3. 農水省の姿勢
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農林水産省は長らく「食料自給率向上」「農業の効率化(機械化・農薬利用)」を優先。
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有機農業は「効率が悪く、収量が減る」とみなされ、主流政策から外れてきた。
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有機JAS認証制度も「小規模農家には手間とコストが過大」と言われる設計で、結果的に普及の障壁になっている。
4. 背後にある「不都合な人たち」
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農薬メーカー・肥料メーカー:市場規模が大きく、有機農業拡大はビジネス縮小につながる。
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JA(農協):農薬・化学肥料・資材の販売に依存。
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行政(農水省):従来の農政路線(化学肥料・農薬前提の効率化)を支えてきた。
こうした「既得権構造」が、有機農業への資金配分や支援策を弱めている可能性は大いにあります。
5. 消費者への影響
結果として、
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政策が本気で支援しない → 生産量増えず高価格 → 消費者に広がらない
という構造が固定化。
一方、欧州のように政治が明確に「オーガニック優先」と舵を切れば、価格低下と普及拡大が進む可能性があります。
結論
日本でオーガニック食品が普及しない背景には、
◎ 政策支援の弱さ、
◎ 農薬・肥料業界や農協の利権構造、
◎ 行政の慣行農業重視姿勢。
といった「政治的要因」が無いとは言い切れません。
単に「消費者が買わないから」ではなく、制度的に広がりにくい土壌が長年維持されてきたことは事実ではないでしょうか?